2010年10月16日土曜日

Athlon Neo搭載モバイルノート、そういうのもあるのか――「Eee PC 1201T」実力診断

 ASUSTeK Computer(ASUS)のミニノートPC「Eee PC」シリーズに、AMD製CPUのAthlon Neoを採用した新モデル「Eee PC 1201T」が加わった。同シリーズの中では、12型ワイドと大きめの液晶ディスプレイを搭載しているのも特徴だ。早速、使い勝手などをレビューしよう。

【拡大画像や他の画像】 【表:ベンチマークテストの結果】

 ボディのサイズは296(幅)×208(奥行き)×27.3?33.3(高さ)ミリで、ほぼA4ジャストサイズのフットプリントに収まっている。重量は約1.46キロとされているが、実測での重量は1.448キロと公称値をわずかに下回った。これまでのEee PCシリーズに比べて大きめのボディだが、モバイル用途にも十分使えるサイズと重さだ。

 背面に搭載する6セルリチウムイオンバッテリーの容量は47ワットアワー(10.8ボルト 4400mAh)、バッテリー駆動時間は公称で約5.2時間とまずまず(バッテリー駆動時間のテスト結果は後述)。付属のACアダプタはサイズが44(幅)×104(奥行き)×30(高さ)ミリ、重量が3ピンの電源ケーブル込みで約327グラムと、こちらもEee PCシリーズとしては少しかさばる。もっとも、モバイルPCと一緒に持ち歩くACアダプタとしては許容範囲内だろう。

 ボディデザインは緩やかに手前側を絞り込んだクラムシェル型のシンプルなフォルムだ。ボディカラーはクリスタルブラック、シルバー、ボルドーレッドの3種類が用意されている。今回入手したのはシルバーのモデルだが、天面およびパームレストのシルバー部分は、粗めのヘアラインの上に光沢がある独特の仕上げとなっている。

●基本システムにはAMDプラットフォームを採用

 ハードウェアの基本システムは、AMDの薄型モバイルPC向けプラットフォームを採用する。CPUのAthlon Neo MV-40は、動作クロック1.6GHz、2次キャッシュ512Kバイトのシングルコアモデルだ。インテルでいえば超低電圧版Celeron 743(1.3GHz)辺りに相当する性能を持つ。TDP(熱設計消費電力)は15ワットとされている。

 チップセットはAMD M780Gを搭載。M780Gに内蔵されたグラフィックスコアのATI Radeon HD 3200は、MPEG-4 AVC/H.264、VC1、MPEG-2など動画のハードウェアデコードによる再生支援機能を備えており、HD動画をコマ落ちなく再生できる。

 メインメモリは標準で2Gバイト(PC2-5300)を装備する。底面の小さなカバーからアクセスできるSO-DIMMメモリスロットには2Gバイトのモジュールが装着されており、増設はできない。データストレージは2.5インチのSerial ATA HDD(5400rpm)を内蔵し、容量は約250Gバイトとなっている。光学ドライブは内蔵していない。

 有線LAN機能は100BASE-TXまでの対応にとどまるが、IEEE802.11b/g/n準拠の無線LAN、Bluetooth 2.1+EDRを標準装備する。モバイルノートPCとして、通信機能に不満はない。

 本体装備のインタフェースは3基のUSB 2.0のほか、SDHC対応SDメモリーカードスロット、アナログRGB出力、サウンド端子など、低価格モバイルノートPCとしては標準的かつ必要十分な内容だ。液晶フレームの上部には、30万画素のWebカメラも備えている。

●プリインストールOSは32ビット版Windows 7 Home Premium

 OSは32ビット版のWindows 7 Home Premiumがプリインストールされる。Netbookに採用例が多いWindows 7 Starterにはいくつかの機能制限があるので、Home Premiumの搭載は見逃せない。

 付属ソフト関連は、Microsoft Officeのデータも扱えるオフィススイートの「StarSuite 9」、動画や音楽、ゲームなどのコンテンツにアクセスできる独自のランチャー機能「Eee Docking」、メディアプレーヤーの「TotalMedia Center」、500GバイトのWebストレージにアクセスできる「ASUS WebStorageサービス」(12カ月無料)などを用意している。

●1366×768ドット表示の12.1型ワイド液晶ディスプレイを搭載

 12.1型ワイド液晶ディスプレイは、1366×768ドット(アスペクト比16:9)表示に対応する。Windows 7登場以降のノートPCでは標準となりつつある画面解像度で、Windows 7を快適に利用するのに必要十分な広さだ。

 表面は光沢仕上げのため、外光などは映り込みやすい。上下の視野角は狭いが、液晶ディスプレイの角度は約135度まで開くので、ある程度上からのぞき込むような場合でも対応できる。ヒザの上で使う程度であれば特に問題ない印象だ。標準設定の発色はややあっさり目の印象で、最近の低価格ノートPCとしては平均的な表示品質だろう。

 液晶ディスプレイに関しては、ASUSオリジナルの画質調整技術「Splendid」も備わっている。「Eee Splendid Video Enhancement Technology」のユーティリティでSplendidを有効(Splendidモード)にすると少しコントラストが強調され、メリハリの効いた画質になる仕組みだ。

 底部に内蔵したステレオスピーカーは特に音質がいいとはいえないが、サラウンド技術の「SRS Premium Sound」に対応している点に注目したい。これを有効にすると音の立体感が増して、かなり印象がよくなる。じっくり観賞するような用途には向かないが、外出先などで手軽にサウンドを楽しむ分には十分だろう。

●余裕あるサイズのキーボードを装備

 キーボードは、キートップのみを露出させ、キー間隔を広くとったアイソレーションタイプを採用している。

 フットプリントがジャストA4サイズに近いため、キーピッチには比較的余裕がある。実測でのキーピッチは、主要キーが約18(横)×18(縦)ミリ、最上段のEscやF1?F12キーが約16(横)×13(縦)ミリ、カーソルキーは約15(横)×17.5(縦)ミリと、極端に小さいキーはない。Enterキーやカーソルキーの周辺には変則的なキーピッチが見られるものの、キーボードユニット自体のサイズが大きめなので、タッチタイプも問題なく行えるだろう。

 キートップは完全にフラットではなく、微妙なくぼみが付けられているので指を置きやすい。キースイッチの感触も良好だ。キーボードユニットの取り付けも比較的しっかりしており、意識して強く押せば少し全体が揺れる程度で、文字の入力中に不快になることはなかった。キーボードの左奥にはタッチパッドの機能をオン/オフするボタンが用意されており、タイピング中の誤操作を防ぐことができる。

●評価が分かれそうなタッチパッド

 タッチパッドはパームレストと一体化しており、小さな突起を長方形に並べることでセンサー領域を表現している。見た目にはシンプルで美しいが、光沢あるパームレストは指の滑りがいまひとつなうえ、突起によってブレーキがかかる印象もあり、使い勝手は好みが分かれそうだ。特に力を入れてパッドを操作するクセがあると、使いにくいと思われる。左右のボタンを一体化したクリックボタンはストロークが浅く、硬めの押し心地だ。

 タッチパッドにはシナプティクスの多機能ドライバが導入されており、2本指での垂直/水平スクロール、つまみズーム、回転、3本指で弾くことによるページ送り/戻しといったマルチタッチジェスチャー機能を利用できる。

●Netbookをはっきり上回る性能

 ここからはベンチマークテストの結果を見てみよう。Windowsエクスペリエンスインデックスのスコアは右に示した通りだ。CPUのサブスコアで3.1をマークしている。デュアルコアのCULVノートPCには届かない値だが、2点台前半が多いAtom N450や同 N280を搭載したNetbookよりはかなりよい。

 体感的なパフォーマンスはCULVノートPCとNetbookの中間のような印象だ。Windowsの基本操作やWebブラウズで特にストレスというほどのパワー不足は感じないが、複数のアプリケーションの処理が重なるようなときはシングルコアだけに、ちょっとモタつくことがある。

 PCMark05のCPUスコアは2140となっている。これはシングルコアの超低電圧版Celeron 743(1.3GHz)搭載機とだいたい同じようなスコアだ。Atom N450や同 N280を搭載したNetbookでは1500前後のスコアが多く、それよりははっきりと上のパフォーマンスを示している。

 3DMark06のスコアは1037で、こちらもAtom NベースのNetbookよりはるかによい。もっとも、本格的な3Dゲームタイトルが十分動作するようなスコアにはほど遠く、カジュアルゲームなどが快適に遊べる程度だ。FINAL FANTASY XI Official Benchmark 3のHigh設定でのスコアは1976を獲得し、一応プレイできるレベルにはある。

●AMDプラットフォームは駆動時間や発熱、騒音にどれだけ影響するか?

 前述の通り、Athlon Neo MV-40のTDPは15ワットとなっている。これは、Atom N280の2.5ワットはもちろん、グラフィックスコアをCPU側に統合したAtom N450の5.5ワットと比べても高い数字だ。そのぶん、パフォーマンスではアドバンテージが見られたわけだが、バッテリーの駆動時間やボディの発熱、騒音といった部分は気になるところだろう。

 バッテリーの駆動時間については、BBench 1.01(海人氏作)を使って実測した。10秒ごとにキー押下、1分おきに無線LANでWebアクセスを行う設定だ。Eee PC 1201Tには電源管理ツールとしてASUS独自のSHE(Super Hybrid Engine)がプリインストールされているが、設定内容の詳細を確認できる手段がないため、これは無効にしてOS標準の「バランス(ディスプレイの輝度40%)」で測定している。

 この状態でのバッテリー駆動時間は3時間39分(残り6%で休止状態へ移行)だった。公称値の約5.2時間にはおよばないが、インターネットへの常時接続環境でこれくらいバッテリーが持つならば、十分実用的な値だろう。

 ボディの発熱は意外にも抑えられていた。しばらく使っているとボディ左側面の排気口からは熱風が出てくることを確認できるが、ボディ表面はそれほど熱くない。室温24度の環境で一連のベンチマークテストを実行した直後の表面温度は、最も熱い底面左側で42度、左パームレストとキーボード左側は33度にとどまった。

 動作音については、Eee PCシリーズとしては静かではないものの、うるさいほどではない。アイドル時や低負荷時でも静かな場所ならファンが回っていることを確認できるが、生活騒音でかき消される程度のレベルだ。高負荷時にはそれなりに音が大きくなるが、音の変化も緩やかでそれほど気にならなかった。

 暗騒音32デシベルの環境でボディの正面から5センチと近い距離で測定した騒音レベルはアイドル時および低負荷時で36デシベル、高負荷時で41デシベルだった。

●バランスのよい低価格モバイルノートとして注目すべき選択肢

 Eee PC 1201Tの標準価格は5万2800円で、2010年4月21日現在の実売価格では5万円を切るショップも見られる。これまでEee PCシリーズではインテルのAtom Nシリーズを採用することが多かったが、それに比べると基本性能が高く、動画コンテンツの再生もより快適に楽しめる。

 プラットフォーム以外を見ても、画面サイズと解像度のバランスがいい液晶ディスプレイにタッチタイプも行えるキーボードを備えつつ、十分携帯できるサイズと重量にまとめており、バッテリー駆動時間は実用的なレベルにある。

 目立って優れている部分はないものの、モバイルノートPCとしてバランスよくまとまっている印象だ。モバイルノートPCの入門機として、あるいはNetbookの画面サイズや性能が少し物足りないユーザーや、13型クラスの液晶ディスプレイを備えたCULVノートPCでは少し大きいと感じているユーザーは、その間を埋める製品として、購入を検討してみるといいだろう。【鈴木雅暢(撮影:矢野渉)】

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